トンガの今日は

南太平洋トンガ王国 日本語教師 青年海外協力隊

Solo taxonomyとは 1

トンガの学校教育には、Solo taxonomy(ソロタクソノミー)という教育理論が導入されています。

提唱者はオーストラリアの教育心理学者John. B. Biggs先生で、1982年に、Collis Kさんとの共著で同理論を出版されています。

 

外国語としての日本語能力基準であるJFスタンダードや、高校生の中国語・韓国語教育の現場から提唱された「外国語学習のめやす」、ヨーロッパで広く利用されている言語能力指標CEFL(セファール:ヨーロッパ言語共通参照枠)、そして国語の学習指導要領などなど、これまで日本で外国語教授法を学ぶうえで、いくつかの言語教育に関する能力指標や理論に会いました。

 

そしてトンガに来てSolo taxonomyに遭遇しているところです。

Solo taxonomyは言語に特化した教育理論というわけではなく、学習全般について発達段階や必要な指導法を記述したものです。

そしてトンガではこのSolo taxonomyに基づいて各教科がシラバスを決めているため、高校の選択科目である日本語も同様、現在わたしは早急に勉強する必要に迫られているということです。

 

そこで手始めにSolo taxonomyの早期教育向けの記事を読んでみました。

 

わたしの理解ではSolo taxonomyの最も基本的な概念は “Five easy steps to deep learning” だと思われます。

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  1. Pre-structural : zero なんも知らん
  2. Uni-structural : an idea ひとつのアイディア
  3. Multi-structural : many ideas  複数のアイディア
  4. Relational : relating ideas 複数のアイディアを関連付ける
  5. Extended abstract : extending ideas さらに別のアイディアへと発展させる

 

このような5段階で表され、それぞれを象徴するかわいい図もあります。

この5段階が学習項目の獲得状況で記述されると、以下のようになるとのことです。

主語は「学習者は」です。(※英文筆者中略あり)

 

  1. Students need help to start : 学び始めるのに助けが必要
  2. Students can ~ if directed or shown exactly what to do : はっきり何するか言ってもらったらわかる
  3. Students can ~ but don’t know why or when so it is trial and error. Students make mistakes. : できるけどミスるし、いつなんで上手くいって、いつなんで失敗するのかよくわからん
  4. Students can ~ and know why and when. Students can ~ strategic or purposeful and correct their own mistakes. どうしたらできるかわかるし、自力でミスを直せる
  5. Students can ~ and seek feedback to improve what they doing. Students can help others and be a role model. Students can find new ways of doing. 他のやつに教えれるほどできるし、さらに上達したいから先生フィードバックちょうだい

 

わたしがおもしろいなと思ったのは、ステップ1、学習者が何も学習していない状態、その項目の学習が始まる前の段階を指標の中に明記しているところです。

 

“Solo level started by indicating that every learner needs help to start.”

Soloは、学習者が助けを必要とする学習開始時点から、レベル付けを開始する。

 

ステップ1 Pre-structural level は “knowing nothing” 「なんも知らん」段階で、この段階の成果(Outcome)は “ready to learn” “find new to learn” つまり、学習開始の準備ができること、学習すべき新事項を発見すること、だそうです。

学習者に学習を始める準備をさせること、何を学習するのか理解させること、は重要な一段階であり、それもすでに学習成果の一部ということですね。

 

日本語教育でいうところの「スキーマの活性化」「ウォームアップ」をきちんと発達段階の指標に明記した、といったところでしょうか。

「できる日本語」という教科書を使ったことがありますが、あの教科書のポリシーも、「まず学生にできない(日本語で言えない)ことを発見、実感させ、そのうえで新しいことを教える」というものでした。少し通じるものがあるかもしれません。

 

やる気がみなぎっているときは、今後もSolo taxonomyの勉強を続けたいと思います。

 

【参考】

Biggs, J. B. and Collis, K. (1982) Evaluating the Quality of Learning: the SOLO taxonomy. New York, Academic Press

Pam Hook & Bridget Cassé (2013) SOLO taxonomy in the Early Years: Making connections for belonging, being and becoming. Essential resources