トンガの今日は

南太平洋トンガ王国 日本語教師 青年海外協力隊

1学期終了【活動期間残り75%】

2月に始まり6月末で、トンガ教員養成校(TIOE:Tonga Institute of Education)の2018年度前期が終了しました。

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TIOEは1年2学期制、卒業まで2年間、合計4学期学習します。

私は1年生2人、2年生1人の日本語教師を目指す学生を教えていますが、

1年生の学生にとっては2年間ある「教師の卵」期間のうち、最初の4分の1が終了したことになります。

2年生の学生にとっては今学期で4分の3が終了、残る1学期を履修して晴れて卒業です。

 

そして私にとっては、2年間あるトンガでの活動期間を、早くも4分の1、25%終えたことになります。

 

1年目1学期のハイライトは、やはり日本大使館主催のスピーチコンテストでしょう。

TIOEの1年生も教育実習などで時間的に厳しいなか出場してくれました。

 

誰がスピーチを聞きに来るのか、親、教師、3年生…自分がそれぞれの立場だったら自分からどんな話を聞きたいか、というところからテーマ選びをスタート

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「私が日本語を始めた理由」「私が日本語教師になりたい理由」というテーマを彼女たちは選びました。

まとまった文章を産出させると新たに、学生の頭の中やこれまでの人生など、学生についてわかることも多々あり、私自身、外国語教育の中でのスピーチや作文の重要性を感じたりしました。

 

スピーチコンテストには離島を含めトンガの各校から学生が集合します。各学年は与えられたテーマごとにスピーチを披露し、日本大使やトンガ教育省職員が審査をします。

今年は7校から出場があり、4年生は「私の夢」、5年生は「私の好きな○○」、6年生は「日本とトンガ」、7年生以上は自由テーマでスピーチをしました。

 

トンガの日本語教育は、いわゆる中級話者が育ちにくく、時にはそれが課題になります。が、私的にはJLPTやJFスタンダードを気にせず日本語学習ができる国というのは逆に貴重、また上を目指すことに必死にならなくてもよい外国語学習環境というのはトンガ特有で守るべきもののようにも思えます。

 

今回、各学年のスピーチ優勝者を見ていると、のびのび楽しそうに、学んだ範囲の日本語を使って話していて、とてもいいなと感じました。

 

一方、教師として今回のスピーチ指導で悔しい思いもしました。

 

一部、各校の学生たちのスピーチの端々または全体に、ロボット的日本語が見受けられました。

というのは、音は発しているものの、おそらく自分が話している日本語の意味はわかっていないというスピーチです。言葉の切り方などから、なんとなく音だけ暗記しているのがわかります。

 

これは推測ですが、書きたい文のレベルが学んだ日本語のレベルを超えていることによるものだと思われます。

 

聞いている限りトンガでは、スピーチを書く際に多くの学校が英語で書き始めます。

英語でスピーチを書く→日本語に翻訳する

英語は学生にとって第二言語ですから、当然、外国語である日本語への翻訳の過程で壁にぶち当たります。

 

結果、辞書だけでは翻訳できない→時間がなくなる→近所の日本人にまるまる翻訳を頼む→意味を理解していないまま音の暗記でカバーしてくる

となります。これでは、外国語学習としては無意味に近く、とてももったいない。

 

私の理想は日本語で書き始めることです。

そうすれば、最初から自分のレベルを過度に超えた文を作らなくてすみますし、じりじりとした長い長い翻訳の時間もカットできます。

学生本人への学習効果も期待できますし、聞いている他の学生も理解できるレベルの日本語スピーチになります。

 

各学校、スケジュールがどうしても厳しく、スピーチ指導については「英語で書いてきて!」「次、それ日本語にしてきて!」「じゃ、毎日昼休み練習に来なさい!」と学生の自力に頼る部分が大きくなっているのが現状です。

その結果、「まるまる翻訳頼る現象」からの「ロボット日本語」が発生しているのではと推測します。

私自身も、スピーチで使った日本語が学生のモノになるまで指導しきれなかった、という不完全燃焼の思いが残っています。

 

トンガの学生が日本語でスピーチを自作できる方法、その学生のスピーチ制作を楽にガイドできる指導法、これは教員養成校で私がアイディアを出し、先生たちに提案するべきことだと感じました。

 

活動を開始して半年、課題を見つけて解決策を練る。

協力隊っぽいですね。

 

また、TIOE1年生1学期に扱った内容は以下の通り。

このトンガで日本語教師になるトンガ人が、そのために何を勉強すると良いのか、引き続き考えていきます。

 

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【トンガ教員養成校 日本語教授法 1学期シラバス

1.私の日本語学習の歴史

2.母語話者教師と非母語話者教師の強み・弱み

3.4技能+1(聞く、話す、読む、書く+語彙と文法)

4.授業を計画するときに必要な情報(時間、学生、目的、学習項目、必要なもの)

5.1コマの構成(導入、せつめい、おぼえる練習、つかう練習)

6.どうやって新しいことを学生に見せるか(トップダウン導入、ボトムアップ導入)

7.「せつめい」とは何を伝えることか(意味、文法、機能)

8.どうやって練習するか(おぼえる練習とつかう練習)

9.教材、教具、レアリア

10.模擬授業(たくさんしました)