トンガの今日は

南太平洋トンガ王国 日本語教師 青年海外協力隊

トンガから非核化について考えてみると

史上初の米朝首脳会談シンガポールで行われました。

 

うちのテレビは2チャンネルしかないのですが、そのひとつであるCGTN(China Global Television Network)が朝からそれについて報道していたので、トンガにいてもそのニュースが伝わってきます。

職場でトンガ人の先生が話題にしている様子はまだ目にしていませんが、外国人の先生は「何が起こるか見てみようぜ」と興味がある様子。

私もやっぱり興味があって、日本を離れてからYahooチェックをおろそかにしていましたが、今回はいくつか記事を追いました。

 

共同声明には「朝鮮半島の非核化をめざす」とありますね。

物心ついたときから5か国が核兵器をもっているのが現状であったからか、特に意識することも無く、アメリカが説得しに行ったな、うまく北朝鮮を落ち着かせることができたらいいななどと悠長に思っていました。

 

が、あらためて考えてみると混乱します。今はお互い武器を持って正対しているけれど自分が武器を手放すとしたら、「え、そんなん言うけど、こっちが丸腰やったら歯向かった瞬間絶対そっち撃ってくるやーん」となりそうなものです。

核兵器をもつ強そうな他の人に「あなたは核兵器を手放してください」と言われてなぜ手放せることになるのか、いまいち理由が納得できず、どうも私は勉強不足です。

中学か高校で、核兵器も環境汚染も原子力発電も「先進国は先やってたからいいけど、自分らが十分利用したあとで世界にだめって言うのは、そらずるいですわ」という他国の気持ちもあるよね、と社会の先生が言っていたのを思い出しました。

 

ところで、ここトンガを含む南太平洋は非核武装地帯にあたります。

世界ではラテンアメリカとカリブのトラテロルコ条約(1967年)をはじめとして、いくつかの非核兵器地帯条約が採択されています。

トンガを含む南太平洋は、1985年にラロトンガ条約(南太平洋非核地帯条約)を採択しています。

ちなみに採択された地がクック諸島のラロトンガ島でした。

これはフランスによる核実験を背景に、同地域で核兵器反対の気運が高まり国連の支持を取り付けた後、オーストラリアの労働党政権下で加速し、1985年の南太平洋フォーラムで採択された条約です。

対象国は南太平洋諸島フォーラムに加盟する16地域でうち13地域(ミクロネシア、マーシャル、パラオ以外)が締約しているとのことです。

条約では、平和目的をも含む核爆発装置の製造や所有、実験などを禁止するほか、核兵器国に対する、南太平洋への核使用や核使用の威嚇を禁止しています。

ちなみにアメリカは署名のみで、他4か国は批准しているとのこと。

 

残念ながら日本は非核地帯には入っていないですね。核拡散防止条約(5か国以外持っちゃだめというやつ)のみの批准です。

 

たまたま最近は核武装や、武装蜂起に関するものをよく読んでいました。

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沈黙の艦隊」はざっくり言えば、政治と軍備が分離しないかぎり本当の(核による)平和はありえない、という発想で日本の自衛隊員が世界を相手に頑張るというストーリーです。

男のマンガ!という感じでした。

その中で提案される「政軍分離」や「世界政府軍構想」、そしてどの国にも属さない世界政府軍設立に、今後日本は出資するべきだという考えなど、ノンフィクションですが、なるほど~と勉強になる部分が多くありました。

 

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国際貢献のウソ」では筆者の方が日本の自衛隊について以下のように記述されています。

自衛隊は「国連軍事監視団」を担うべき。休戦・停戦がちゃんと行われているか、中立に立ち「俺を撃ったらおしまいよ」の空気を作って監視する。そうして兵力削減、武装解除を進めていく。」

つまり日本の軍事力は現場で仲裁する役を担うべきということですよね。

 

先進国に名を連ねていて、そして一応お金もあって、一応アメリカやヨーロッパと話ができる立場にあって、でもイスラム世界、アラブ世界ともわりと仲がいい。

それは日本のかなり大きな財産だと私も思います。

白黒はっきりつけるのではなく、みんなをグレーにしてなんとなく平和を維持していくのもひとつの道で、それこそ日本がほかの国とちがってできることのように思います。

 

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ただ伊勢崎賢治さんの著書を読んでいると武装解除がいかに「甘っちょろいものではない」か、そして国際貢献がいかに「甘っちょろいものであってはいけない」かなんかを感じ、核兵器や紛争がなくなればいいなと思っているだけの自分はけっこう甘いなと思いました。

 

これまで自分の日本語の授業で平和や戦争などを扱ったことはありません。

でも、非核地帯のトンガで被爆国の日本について学ぶというのも、トンガの日本語教育に必要なひとつのトピックかもしれません。

トンガの日本語教育の主な目的に、「外国を学んでトンガを知る」というのがありますが、彼らはトンガの非核についてどう思っているのか、大変貴重なことだとわかっているのか、気になるところです。

世界大戦中の日本の歴史を学び、原子力爆弾とその周辺の話を知り、そして現在の日本の状況を知って、トンガの学生がどんな感想を持つのか、「日本は被爆国なのにどうして」と思うのかどうか、興味があるところです。

 

【参考】

外務省HP(2014)「これまでに署名された非核兵器地帯条約」

かわぐちかいじ(1988~1996)『沈黙の艦隊講談社

伊勢崎賢治(2010)『国際貢献のウソ』筑摩書房

伊勢崎賢治(2004)『武装解除 紛争屋が見た世界』講談社現代新書