せっかくなので授業のネタに「平成→令和」
私はトンガ教員養成校で日本語教師になるトンガ人を指導しているのですが、平成最後の4月30日にちょうど担当の授業がありました。
せっかく日本が盛り上がっているので、トンガでも学生と話題にしようと、天皇や元号について授業で扱いました。
読解教材「日本のあたらしいてんのうへいか」(自前)
【私が思う面白ポイント】
1.ふつうは天皇が亡くなってからの新天皇即位で急なイベントになるが、今回は天皇陛下がご健在でしかもあらかじめ変わる日がわかっているのでみんなはしゃげる。
2.はしゃぎかたが、カウントダウンイベントや令和Tシャツの販売。宗教と伝統と若者文化が混ざって盛り上がってる。
3.日本は西暦と一緒に元号を使っていて、ひとつの時代が終わると天皇を元号の名前で呼ぶ。昭和、平成など各時代にそれぞれなんとなく「戦争の時代」とか「戦争がなかった時代」とかイメージができる。
4.「平成」生まれの私が今もっている、なんかさみしいけど、ちょっといい感じにそわそわする気持ち。
5.日本も古くからの皇室がある国だが、トンガもポリネシア唯一の王国で王様がいる国で世界でも少数派。そこに日本とトンガで共感できる部分があるかも。
【授業のねらい】
1.文化学習
トンガで日本語教師になる彼女たちが、将来自分の学生に日本の豆知識を話せるように。
2.トンガとの比較
天皇や王様がいる国は世界でもいくつかで王室同士の交流もあるので、そこにトンガと日本の似ているところと違うところを発見してほしい(余談ですが、トンガも日本もそしてタイも戦争中に植民地にならなかった国で、やはり王様がいると一目置かれる、的なことってあるのでしょうか)。
3.日本語を読む練習
日本語教師になろうとしている私の学生たちですが、なんせ漢字が弱い。文法が弱い。基本は会話重視のコースなのですが、平成とか令和とかいっさい関係なく、すきあらば日本語を読む練習をさせたい。
【授業の流れ】
1.「先生は今日そわそわしている」と学生に伝える、学生もうきうきする
2.天皇陛下が神社に退位報告される動画ニュースを見せ(今日はネットが好調だったので見れた)、今日がどうして特別なのか学生に推測させる(学生は天皇陛下の平安時代みたいな服装に興味深々)
3.「なんと今日日本の天皇陛下がかわりまーす!」学生「え!死んでないのに?!(失礼)」
4.日本語の文章を読む前に簡単に知識を整理、天皇陛下やトンガ国王について雑談
5.読解教材「日本のあたらしいてんのうへいか」配布
6.ひきつづき雑談もまじえつつ、日本語の文章を読んでいく
7.将来授業の箸休めとかでこういう豆知識使ってね、と指導
【学生の反応と面白かったこと】
1.学生「え!死んでないのに?!(失礼)」
天皇陛下が85歳でお仕事が大変というと、学生も陛下の年齢にびっくり、そして共感した様子でした。
2.学生「天皇陛下は納得しているんですか?」
政府が特例の法律を作って存命退位を可能にしたと話すと、それは政府の意向か、陛下御自身が納得していることなのか、という点が気になったようです。さすが王国育ち、なるほどな質問でした。
陛下が退位したいというのを国民に伝えて、それで政府が動いたんだよと話すと安心していました。
3.歴史専攻の学生が興味津々「いちばん長い時代はいつでしたか?」
トンガの教師は一人2科目が原則で、私の学生のうち一人は歴史の教員にもなります。彼女が今回元号の仕組みにとても関心があったようで、いちばん長い元号は昭和で62年続いたというとびっくりしていました。(ただ、昔は天皇の退位だけでなく大災害などでも元号を変えていたらしいですね。)
4.「平成が終わる前のさみしい」とはどんな気持ちか
「さみしい」という日本語、いつもなんて翻訳されるべきなのか迷ってしまいます。私の学生は離島出身で、学校に通うために本島に来て親戚のうちで暮らしています。
ということで今回は「あなたたちがババウ島とエウア島を離れてトンガタプに来た時の気持ち」と説明。「新しいことを楽しみにしている反面、住み慣れた島を一人で離れるので少し心配で、新しい場所で自分の島を思い出してしまうことはすでにわかっている」的な。
「先生は平成生まれなので、今日平成が終わるからそういう気分だよ~」と話し、まあまあの納得具合だったと思います。
5.トンガでも王位継承は一大イベントで、各村はそれぞれの村の踊りを献上するそうです。新しい王様はすべての島を回って挨拶するということでした。今の王様ジョージツポウ6世は2015年に即位されたのですが、その際なぜかうちの学生は王様にテコンドーを披露したそうです。なんでもありなんか?
天皇とか皇室とかいうとかたい話に聞こえますが、やはり天皇は宗教、宗教は文化、文化を表すために言語があると思うので、やはり勉強するのは面白いですね。