トンガの今日は

南太平洋トンガ王国 日本語教師 青年海外協力隊

ひらひら展を通して教授法を教える1 【Project based learning】

9月に高知県黒潮町すなはま美術館による「ひらひらTシャツアート展」が勤務校で開催されたのですが、準備から開催をまるごと日本語の授業に利用させてもらいました。

日本語教育+教授法的な目線から、ひらひら展を振り返ってみます。

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ひらひら展を通して学生に教えようと目論んだテーマが2つ。

Project based learningとARCS Modelです。

 

Project based learningとはカナダ、マックスター大学のジョンデューイ(John Dewey)さんという教育学者の先生が提唱した教授法(1897年~)です。

話題のアクティブラーニングの一手法で、ざっくり私の解釈で言うと「学習は能動的」という思想のもと「プロジェクトや課題解決を計画、現実の社会的活動として実現させ、その過程で学習する」学びの方法です。

 

大きな理論で情報はたくさんあるのですが、私がトンガ人日本語教師のたまごにPBLから学んでほしかったのは次の4つのアイディアでした。

1.Active learning 準備の過程で学生が自ら学ぶ

2.Beyond class room 教室を越え教師以外の日本語話者と交流する

3.Interdisciplinary ひとつのプロジェクトを通して言語の4Skills+1(Listening, Speaking, Reading, Writing, Vocabulary, Grammar)をぜーんぶ鍛える

4.Teacher as facilitator 教師は教えるだけでなく、学生が自分で学べるよう手助けする

 

上の考え方をのちのち教えようと目論み、今回ひらひら展に向けて学生に学習者としての課題を3つ与えました。(※がっつりPBLでは課題も学生が設定します)

【課題1】ひらひら展や高知県について情報を集め、トンガ人ゲストのために説明ポスターをつくる

【課題2】紙Tシャツアートを体験し、自分の作品を日本人ゲストに紹介する

【課題3】美術館スタッフさんや日本人ゲストに学校案内ツアーをする

 

うちの陽気な学生たちはいずれの課題ものりのりでこなしてくれました。

ひらひら展後に教授法の授業で、自分達が学生としてやってきたこととPBLの考え方を比較しながら、今度は教師目線で振り返りました。

 

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1.Active learning

・準備の過程でたくさん日本語を読んだり書いたりした

・準備の過程で学校案内や作品紹介のデモンストレーションをたくさんした

・日本人にとっておもしろいことを考え自分で学校案内の話題を選んだ

 

2.Beyond class room

・すなはま美術館のスタッフ

・JICAボランティアやその家族

・JICAの日本人スタッフ

日本大使館のスタッフ

・学校の他の学生や先生たち(トンガ人)

・他校の生徒や先生たち(トンガ人やアメリカ人ボランティアなど)

・トンガラジオのスタッフ

・トンガ人アーティスト

ひらひら展を通してどんな人と関わったかと問いかけると、ノートにたくさん書きだしていました。

日本人はそれぞれの名前を書いていたのでびっくりです。

 

3.Interdisciplinary

【課題1】英語でのひらひら展紹介を書くため、日本語の読解資料(美術館HPのリライト教材)をたくさん読んだ。→Reading, Vocabulary and Grammar

 

【課題2】日本語で自分の作品紹介を書いて、それをゲストに話した。質問に答えた。→Writing, Reading, Speaking, Listening and Vocabulary

 

【課題3】日本人ゲストに学校案内をするため、文章を書いて練習、当日は質問にも答えながら案内。 →→Writing, Reading, Speaking, Listening, Vocabulary and Grammar

 

【副産物】

・日本からのTシャツ作品に書いてある漢字を読んだ →Reading and Vocabulary

・美術館スタッフにお礼のメッセージを書いた →Writing and Vocabulary

・美術館スタッフがメッセージをくれた →Reading

・歓迎のために知ってる日本語の歌を歌った →Singing笑

 

4.Teacher as facilitator

それぞれの課題に学生が取り組めるよう、教師である私がどんな準備をしていたかを紹介しました。

学校案内の作文の過程を振り返るとき、案内をするために最初に何をした?と学生に問うと「案内文を書いた!」というこたえが。

「本当に?」ともう少し注意深く思い出させると、「あ、最初に先生からのQにこたえた」と期待した回答が。

まとまった文をいきなり書かせるのはハードルが高いので、のちのち使えるような短文をまずはノートに書かせ、それを組み合わせて文章を産出させています。(例:TIOEはだれの学校ですか→先生になりたい学生の学校です)

教師は指示を与えるだけでなく学生が登りやすい階段を作る必要があることに、今回学生が自ら気づいてくれたのはなかなか嬉しかったです。

 

ARCS Modelについては別稿で。