トンガの今日は

南太平洋トンガ王国 日本語教師 青年海外協力隊

協力隊に応募する人、協力隊に合格した人に伝えてみたいこと

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協力隊に応募し合格通知をもらったあとに、いろいろな理由で参加を辞退する人がいます。

もちろん家族や健康の問題でやむを得ず泣く泣く辞退する方もいますが、

派遣先を見て、行きたい国じゃなかったから、やりたい仕事じゃなかったから、という理由で辞退する例もちらほら聞こえてきます。

それについては、私は本当に残念でしょうがないです。

 

理由1:JICAの面接で選ばれたということは「この応募者はこの派遣国、派遣先に合っている」と判断されたということだと思うから。

 

訓練所で同期隊員を見ていると、どうしてもその国にあったキャラが選ばれているような気がしていました。例えばジャマイカに派遣される人はみんな破天荒やな(例です)など。

トンガに来ている隊員も、なんとなくみんな一人でも楽しく過ごせるような、おだやかな人が多いのかなと感じます。

協力隊は技術面接の他に人物面接があるのですが、面接官の人キャラ見抜いて振り分けてるのかしら、さすがやなと思ってしまいます。

その派遣先を渡されたということは、ベテランの面接官の方々が、その人に合う派遣先はここや!と判断した結果で、予想外の国であっても行ってみてはどうか、と私は思います。

 

理由2:合格者が出た瞬間から受入国の現場では「よっしゃ、自分がやってきたことがまたつながる~」と喜ぶ現役隊員や、ボランティアが来ることを心待ちにする現地の人がすでにいるから。

 

格通知を受け取った時点では想像できないのですが、海の向こうの派遣先では、「お~次の人が来るぞ~!」と喜び、合格者に期待する人がすでにいます。

現役の隊員の場合ですと、自分が2年で積み上げたことが継続していくかどうかは、後任が来るかに大きくかかっています。何かいいプロジェクトや習慣を現地の人達と始め、隊員が帰ったあとも継続、発展するためには後任のボランティアが必要、という状況は多くあります。

 

私が働くトンガ教員養成校の日本語科もまた然りで、トンガ人日本語教師のことだけを考えて作った教授法シラバスが引き継がれるためには、また今日本語教師になるべく頑張っている学生が学習を続けるためには、自分の後任の存在が必須です。

 

またトンガの場合はボランティアをとてもよく歓迎してくれる派遣先が多いと思います。私の同僚の先生も「日本人ボランティアは英語が話せないことが多いけど、それでも私達はなにかしら意思疎通ができるし、職場に違う文化の人がいることはとても嬉しいよ」と話してくれたことがあり、現地の人もJICAボランティアやアメリカのPeace corpボランティアを楽しみにしてくれています。

 

 

理由3:「そのタイミングでその場所にボランティアが派遣されない」ということは、予想以上に現地に大きな影響を与えるから。

 

反対に、もし来るはずだったボランティアが来なかった場合、その打撃も大きいと私は思います。

勢いに乗り始めていたプロジェクトや、定着しはじめていた習慣が、JICAボランティアがいなくなったことで自然消滅するということは大いにあり得ます。次のボランティアがその派遣先に行ってまたゼロからやり直し、長い目で見るといつまでたっても発展していないという結果にもなりかねません。

 

私の学校の場合はまた切実です。

なにせトンガの日本語教育なので、うちの学校に日本語教師は私一人です。

つまり私のあとに後任が来ない場合、単純に日本語科に教師がいなくなり日本語をとっている学生は授業を受けられないことになります。授業を受けられないと当然卒業できないので、その年は新任の日本語教師がゼロとなります。

 

教師がいないことによって、日本語が開講されない学校もありますから、つまりはトンガの高校現場における日本語学習の機会が減ることになります。

トンガの日本語教育は、この国の外国語科目の役割を大きく担っている(トンガでは第二言語は日本語、中国語、フランス語のみで、中国語とフランス語は国内で1,2校でしか実施されていません)ので、私の日本語の学生が卒業できるかどうかはとても大きな問題だと思うのです。

 

格通知に印字された派遣国の名前からは想像できないとは思いますが、合格したあとに辞退するということは、現地の人や現役隊員の人生、そしてその国のその活動の今後に予想以上に大きく影響しています。

 

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つまるところ、

日本語教師国際交流基金などいろいろな形で海外派遣の募集がありますが、

ただし国際協力の文脈で派遣される日本語教師の場合、「興味がない国だったら行かなくてもいいや」というテンションで応募するのは、私は無責任だな~と感じ好きではありません。

 

会ったことのない現地の学生に共感することはむずかしいことだとは思いますが、ボランティアが来ないことでその学校の日本語学習が、その国の教員養成が停止する、というトンガのような現場もあるわけです。

 

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私はトンガに行きたくて協力隊に応募しました。

他の国には特に興味がなく、面接官の方にトンガ以外の場合は辞退するので不合格にしてくださいとはっきりお伝えしました。

えらそうだな自分、とも思いましたが、合格してから辞退するよりははるかにいいと思います。

そしてどうしてトンガに行きたいのかを話し、わかっていただけたので、ありがたいことに第一希望の派遣先に今来れているのだと思います。

 

協力隊の応募を考えている方で、どうしても行きたい国や要請がある方はぜひそれを面接で伝えてほしいです。そして他の派遣先の場合行かないなら、それも面接で伝えたらいいと思います。理由が明確で説得的であれば、希望通りの派遣先に行けるはずです。

合格して、でもやっぱり心配で、あるいは興味が持てなくて辞退を考えている方は、ぜひもう一度、ただその仕事で行くのではなく、国際協力というカテゴリーでその仕事をしに行くという点を、考えてみてほしいと思います。

 

おまけ

理由4:あとトンガも、他の国もきっと、行ったら行ったでぜったい面白いことがあると思います!