年に一度のトンガ日本語教師会
年度末の大山場、各島からも先生たちが大集合、日本語教師会の年次会議が実施されました。
トンガにはJLTAT:Japanese Language Teachers Associaition of Tongaなる、日本語教師会があります。
トンガ人教師、日本人教師全体のグループ、とはいえ実働中のトンガ人の先生方10数名と日本人ボランティアなのですが、スピーチコンテストや教科書についての相談などトンガ日本語教育全体に関わる業務を担っています。
というのは建前で、本当のところはトンガ人の先生方にもトンガ日本語教育全体の業務に関わってほしくて、またはトンガ人教師全体のレベルアップをしたくて、みんなでやっている感じで日本人ボランティアが運営しています。笑
さて、そのJLTATで2014年から始まったのが、Annual Meeting年次会議です。開始当初は年に2回やっていたそうですが、現在は年に1回、学年終了後の11月に実施されています。
今年も11月21日・22日の2日間に渡って開催されました。
このJLTAT会議、来年度のスピーチコンテストや書道コンテストの課題をみんなで決めたり、各先生が学校の状況をシェアする大変重要な機会です。昨年からは、各トンガ人の先生が自分の学生に自ら指導できるよう、みんなで書道を練習する時間を設けています。
これを実施するようになってから、各現場の授業の漢字指導の際に先生方が「とめ~はね~はらい~」と学生に指導している様子が見られたり、なかなかいい影響があるなという印象です。
ともすれば見本の漢字を半紙の下に敷いて書いたり、二度書きがんがんやってちゃったり、とめるところで元気にはねたり、先生方も書道はまだまだ伸びしろいっぱいなので、年次会議でのみんなでの練習も来年以降も続けてほしいところです。
さらに、教員養成校や教育訓練省に配属される日本語ボランティアにとっても、この会議は大義名分をもって先生方に指導法改善の提案をできる貴重な機会です。
普段は学校現場に行ったときに、それとなく「あれはなんでああいう教え方なんですかね~」とか「何か教え方で困ってますかね~?」と聞いておしゃべりするのが精いっぱいなのですが、なんせ教師の年次会議ですから、堂々と「こんな教え方どないですかー?!」とお話しできるわけです。
そこで今年は、この1年間各校を訪問した際に「文字指導のむずかしさ」を先生方からちらほら聞いたので、文字の教え方についてのワークショップをさせていただきました。
日本語の文字の豆知識、漢字が最初にやってきて、お坊さんたちが漢字を省略してカタカナを作って、インテリお姉さんたちが漢字を崩してひらがなを作って、昔の日本人はLazyだったね、という話。
文字を教えたり練習したりするアイディアには、空書とか、連想法とか、ビンゴとかあるよね、○○高校の先生はクロスワードゲームもひらがな練習で使ってますよね、という紹介。私がこっそり自慢に思っている、トンガ版「漢字宝島」(自主制作 笑)も先生方に共有できました。
いろいろお話しできて、トンガ人の先生方にも楽しんでいただけた感触でしたが、しかし本当に私がやりたかったのは実は「スピーチの教え方」でした。
2年前トンガに来てすぐスピーチコンテストがあったのですが、丸暗記でロボットのような話し方をしている学生の多さを見てショックを受けました。そこには先生方が教え方がわからなかったり時間がなかったりして、学生にスピーチ制作を丸投げしている状況があり、その状況に任期中になんとか一石投じたかったわけです。
ということで2年目のJLTAT会議でスピーチ指導法についてワークショップを行うことを野望にしていたのですが、断念。
その理由は、2年目に離島も含め各高校現場を回っていて「あれ?インタビューテストやスピーチ練習…音声言語やけどもどの学校も文字を使った練習に頼りすぎている?」「いやそもそも4技能についてのもう一度みんなで勉強した方がよさそう?」という点に気付いたからでした。
そこで、文字指導のワークショップといいながら、こっそり裏テーマを設け
「ところで言語能力って何ですっけ?」
「そうそう、トンガのシラバスにもありますけど4技能で分けて考えられますよね」
「文字ってどの技能?ええ、ええ、WriteとReadです。人間InputのほうがわりとOutputより簡単にできるみたいなので、文字の練習も、Input練習のReadのあとにOutput練習のWriteをする、という順番にすると学生がついてきやすいかもしれませんね」
「…ところでインタビューテストやスピーチはListenとSpeakで、文字ではなく音声の技能ですが、先生方、こちらで文字をたくさん使って練習してるなんてことは無いでしょうか?もし文字を使っていたらそれはReadとWriteの練習で、インタビューテストやスピーチの練習では無いですよ~」
と、最早ただの力業ですが、どうしてもスピーチや口頭練習への未練がたちきれず、この話も今回のワークショップにねじこんで終わりました。
トンガ人の先生方、結構うなずいてくださっていましたが、響いているといいな…
なかなか来てくれない先生がいたり、出張費が欲しくて来てくださっているだけの可能性もあったり、来ていただいてもあの先生あまり楽しくなかったかな?という心配もあり、トンガ人教師による運営という大きな目標まではまだまだのJLTAT会議です。
ですが、積極的に手伝ってくださる先生がいたり、離島の先生たちと世間話ができたり、ボケたりボケられたり、つまんなそうにしていたかと思ったら最後は自ら会場の掃除をして帰ってくださった先生がいたり、早く帰りたいかな?と思っていたら意外と自由参加のランチと映画観賞会にも大多数の先生が残ってくださったり、やってて嬉しくなることも毎年いくつかはある会議です。
日本語ボランティアにとってはなかなかタフな行事なのですが、来年以降も続いてほしいなと、去る身ながら思います。
お疲れさまでした!自分!と運営にあたったJICAボランティアの先生たち!